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【『有毒少年』売込隊ビーム公演用宣伝チラシコピー/完全版】
考えた。売込隊ビームのミタニさんに出演してもらうことになっているウチの芝居『有毒少年』、その宣伝用に配布することになったこのチラシをどのような内容にすれば観客動員につながるのかを僕は考えた。考えに考えたが考えつかなかった。なので観客動員のことはスッパリとあきらめて、僕とミタニさんの思い出について思いついたはしから書いていくことにした。たぶん、印刷する価値もない、無駄を酢で締めて寿司にしてみました、みたいな内容になると思う。よくわからない内容ということだ。だから、ここから先は是非読まないでいただきたいと切に願う。でもそれでも読んでくださる皆様にはちゃんとごあいさつをしなくてはいけない。はじめまして、売込隊ビーム『MM』をご覧に来られた皆様。僕の名前はスエミツ。日系日本人の三世です。ヒヨコのオスとメスを仕分ける仕事を生業とし、日雇いバイト感覚でピースピットという演劇ユニットも主宰してます。どうぞお見知りおきを。
さて、さっそくだが僕とミタニさんとの思い出について語ろう。彼女との出会いは数年前、伊丹AI・HALLで観た確か『トバスアタマ』というタイトルの作品だったと記憶している。僕は観客席で観客として、彼女は舞台の上の役者として。当時、演劇をはじめて間もなかった若輩者の僕は、舞台上を楽しそう走り回る彼女たちを羨望の眼差しで眺めるしかなかった。
二度目の出会いはある劇団が主催した二〇〇〇年を迎えるためのカウントダウンパーティの席上だった。軽く会釈する程度だった。しかし、僕はいつか羨望の眼差しで眺めた役者さんが目の前にいることにドキドキした。ミレニアム・ドキドキだった。
二〇〇一年一月。それまで役者として活動していた僕はかねてより希望していた作家・演出家としての活動もスタートさせることとなった。『スエサンヤマサンのおもちゃ会議』というタイトルの作品がそのデビュー作だった。
僕は突然ミタニさんに出演依頼をした。
お互いにお互いのことを観客席でしか見たことがなかった。しかし、僕はあのカウントダウンパーティで軽く会釈を交わしただけの彼女をどうしてもキャスティングしたかった。理由はない。動物的直感だ。彼女は得体の知れない僕の依頼を快諾してくれた。
そして、僕はついにデビュー作『スエサンヤマサンのおもちゃ会議』で彼女とはじめての共演を果たすこととなる。その時から、僕は女優・ミタニの術中にはまっていったのだと思う。
彼女にはルパン三世に出てくる峰不二子をイメージした「フジコ」という役をやってもらった。彼女が稽古場で披露した役作りは全然峰不二子じゃなかったけど、すごくかわいかったので僕は満足した。同じ芝居で「ウサコ」というウサギのおもちゃの役も演じてもらった。バニーガールをイメージした妖艶でセクシーな役所になる予定だったが、なにを思ったのか彼女はある日全身ウサギの着ぐるみを着て稽古場に現れた。全然セクシーじゃなかったけど、すごくかわいかったので僕は満足した。
かわいさ、それは女優・ミタニを語るには欠かせないファクターだ。僕は彼女の術中にはまっていた。
術中にはまった僕はさらに女優・ミタニを深く掘り下げてみたいと思った。僕は考えた。どこを掘るべきか。そうだ、ミタニさんも御歳二十ウン歳(僕と同い歳だ)! 役者として、いつまでもかわいさで売るには忍びないお年頃だ。だから、僕はミタニさんには内緒で、脱・かわいさ、という観点から彼女を掘り上げることに決めた。昨年七月に出てもらった『タイガー』という作品でその試みは行われる。その作品での彼女は、数百年に渡って戦争を続ける部族の長という役所だった。威厳となによりも存在感が必要だ。激しい立ち回りもあった。壮絶な死を迎えるシーンもあった。かわいさ、では決して乗り越えることのできない難役だ。果たしてこの掘り下げは彼女の中からなにを発掘するのか。
かっこよさ、だった。その作品でのミタニさんはそれはもう一言、かっこよかった。僕はミタニさんのかっこよさにとても満足した。ますます、僕は彼女の術中にはまった。
ミタニさんとは客演先の劇団で一緒になったこともある。その芝居はオリエント急行の殺人事件を題材にしていて、彼女は殺人事件の起こる列車に乗り合わせた売れない女優という役所を変な演技プランで変に演じきった。変だった。とにかく変だった。なんかくねくね踊っていたのだけよく覚えている。ホントに変だった。でも、それはイケてる変さだった。僕はさらに術中の深みにはまる。
かわいくてかっこよくて変な女優。
そんな女優、そうそういない。つまり、彼女はオンリーワンな女優というわけだ。窪塚洋介くんもなにかのインタビューで言っていた。ナンバーワンよりオンリーワンになりたいと。ちなみにこれは自慢話になるが、僕は窪塚洋介くんと映画で共演したことがある。去年公開された卓球の映画だ。機会があったら是非観てほしい。窪塚くんとはその映画の準備期間中、東京の阿佐ヶ谷にある卓球練習場でともに卓球の特訓に汗を流した仲だ。彼は僕にポカリをおごってくれた。彼は僕よりふたつも年下だったのにポカリをおごってくれた。本来ならば年長者である僕がおごらなければならない立場であるはずなのに、僕は「芸能人がおごってくれるポカリ」という誘惑の前になす術もなく、子犬のようにおごられた。その時のペットボトルはプラスチック製のケースの中に厳重に保管して部屋の一番高いところに飾ってある。自慢ついでにさらに自慢話をしておくと、僕はあの女優・深津絵里さんと飲み会の席で同席したこともある。総人数7名の緊密な飲み会だ。彼女はひとつ飛んで隣の席に座っていた。かわいかった。ほとほとかわいかった。芸能レベルのかわいさ、という蜜の甘さを知った。そういえば、僕は人間も動物もかわいいものにはとにかく目がない。深津さんはかわいかった。目がとてもかわいくて、思わず吸いこまれそうになった。窪塚くんもかわいかった。特に足首がかわいくて、ルパン三世のように細かった。芸能レベルのかわいさに巻き込まれたあの日の体験は貴重かつスイーティな思い出として僕の心に深く焼きついている。
閑話休題。とにかく、ミタニさんはかわいい……だけではないオンリーワンな女優だ。僕はミタニさんに尊敬の意を寄せずにはいられないのである。そして、そんな彼女を動物的直感で自分の芝居に引き込んだあの時の僕にも感謝せずにはいられない。サンキュー、俺。君の直感は鋭く正しかったよ。そう、褒めてあげたい。
僕とミタニさんにまつわる思い出といえば、だいたいこんな感じである。二〇〇三年三月、『有毒少年』でまたあなたと共演できるのを楽しみにしています。『MM』、頑張ってください。
最後に、ミタニさんに私信。「5日間しか稽古に参加できないから出番は少ししかないようにしておきます」と言っておきながら結構な分量の台詞を割り振ってしまったことは、台本をまだお渡ししていない段階であなたは知る由もなく、この文面を見てから少なからず動揺されていることかと思います。だから、今日の本番でもし動揺したミタニさんが台詞を噛んでしまってもそれは全部僕のせいです。先に謝っておきます。本当にごめんなさい。念のために繰り返しますが、ミタニさんが今日、台詞を噛んでしまったとしても、それはミタニさんのせいではなく僕のせいです。本当に本当にごめんさいさい。
そんなわけで、なにを宣伝しているのかよくわからないままのこの文面をここまで読んでくださった皆様には頭を地面につけて感謝です。ありがとうござじば……ああ、噛んだ!
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